ササヤキ彷徨の神殿

非学力低下論

Scholastic Ability is Not Declining
2005.08.03
「え~、では今日は平安時代の…」「先生、地球の荒廃でそれどころではありません。」
「学力が低下してる~」と一々大騒ぎする大人達が数多く見受けられる昨今。

でも、本当に低下してるんでしょうか?ってか、学力って何?

だいたい、「学力が低下した~」って騒いでいる人は、そうやって今の子供達の学力にケチをつければ、相対的に自分達の方が優秀ってことになるから、言っているのかもしれません。

「まったく、今の子供はだめだな~。自分達が子供の頃は、それはもうちゃんと勉強して、みんな学力優秀だったんだぞ」なんて下らない優越感に浸るべきではありません。そんなに優秀な学力を身につけてきたのなら、情報技術ぐらい簡単に使いこなせよ中高年、ってな話です。

人間の能力は、何かを得れば何かを失います。

トータルで見なければ意味がありません。

例えば、今の子供達は、環境問題に強い関心を持っているようです。

そう聞くと、多くの大人達は「テレビの影響で」とか「情報が多いから」とか言うかもしれません。もちろん、学校での教育の影響もあるでしょう。

でも、それだけではないと、僕は思います。

どんなに多くの情報に触れたって、興味の湧かない情報は素通りしていきます。情報があるだけで関心を持っている、というのはあまりにも子供をバカにした考え方です。

昔の子供にとって見れば、多くの自然環境が失われ、数多くの生物が絶滅し、人類もまた絶滅の危機に直面する — そんなのは、想像もつかないほど遠い未来の話、SFの世界の出来事でしかなかったでしょう。他人事です。

しかし、今の子供達にとってみれば、三十年後、五十年後、自然環境の悪化で生存さえもままならなくなる、というのは、リアルに自分達が直面し得る未来なのです。何も考えずに突き進めば、そこには破滅しかない…そんな未来を肌で感じ取り、だからこそ、環境問題への関心も高いのだと思います。

つまり、今の子供達は、昔の子供達が想像もしなかったようなことを自分達の問題として考えているわけで、昔ながらの試験方法そのままで「学力が低下した~」と騒ぎ立てるのは、アンフェアです。

そして言い換えれば…

子供達の方がより未来を見ているかもしれない、ということです。

大人達は、「自分達はこのやり方で何十年と生きてきた」などと過去の栄光を振り回すのではなく、「子供達を通して未来を御教授いただこう」というぐらいの謙虚さが必要です。

それでもなお、「子供の内から環境問題なんかに興味を持ったって、解決するような力は無い。それよりも基礎学力を云々」と言う人もいるでしょう。

でも、今すぐに言葉にできたり、何らかの答えを出せたりする必要はありません。

世の大人達はとかく「即答」を喜びますが、即答はコンピュータの得意分野です。皆が即答できる必要はなく、これからは、機械のように正確な(あるいはその場しのぎの)即答よりも、10年単位で思考を熟成する能力が、多くの人に求められます。

たとえ今はよく分からなくても、ひらめきといったものは、10年、20年と頭の中で熟成されていく中で生まれ出るものです。芽が出るまでに長い年月がかかるのだから、早い内から種を蒔いておくことは、決して無駄ではありません。

というわけで、(今一つまとめ切れてない文章でもあるし)まとめとくと、「時代は変わった」ってことかな。

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