いつかそこにあったフロンティア ゴールドラッシュに押し出され 帝国一つ、出来上がる
フロンティア(frontier)、英和辞典を引けばいろいろな意味が書いてあります。興味ある方は辞書を引いてください。
ここでは、「開拓の最前線」といったイメージです。
さて、そこはどんな世界でしょうか?
そこは、見渡す限りの未開の荒野。まだ、ほとんど人の手は入っていません。
ポツポツと、人が入植し始めたところです。
何でもありの無秩序で危険な世界。無茶がまかり通ります。
ほっといても、誰も何も用意してはくれません。全部自分達で何とかする必要があります。
結果としてでき上がった町は、自分達で作り上げたが故に愛着も強く、また、自分達で物事を動かしているという実感から活気も生まれます。
自由 — 例えば、土地を見つけて勝手に耕す、といったこともできるでしょう。
不便 — 逆に言えば、自分で耕しでもしないと誰も食料を用意してはくれない、という不便さもあります。
そんなフロンティアで見るのは、都市の夢。
いつかそこが大きな都市になり、皆が豊かに暮らせる日を夢見ながら、町を少しずつ大きくしていきます。
無限に続く大陸など、ありはしません。大陸の端から端まで開拓し切ってしまえば、フロンティアは失われます。
必ず終わりの訪れる、限りある時代。
終わる宿命だからこそ、溢れる活気と同時に、ある種の悲しさもつきまといます。
そして、そんな感傷もろともゴールドラッシュは、一気にフロンティアを押し流し、その後には巨大な帝国が一つ、でき上がります。
かつては誰のものでもない未開の荒野だった場所も、区画整理され、各区画には所有者が付くようになります。
都市は法秩序に守られ、フロンティアよりもずっと安全な世界になります。勝手なことはできません。
全部自分達でやらなくても、その道のプロがやってくれます。
そうして生まれる都会の空気は、「世の中は自分のあずかり知らないところで動いてる」というものになり、地域への帰属意識も薄れていくでしょう。
窮屈 — 街中でいきなり焚き火をしたり、勝手に空いてる土地を耕したり、といったことはできません。
便利 — いろんなものが用意されていて、例えば自分で食料を生産しなくても、お店で簡単に手に入ります。
こうして生まれた都市は、きっと、いつか見た夢です。
時に下品で、力任せで、「僕達はこんな未来を望んだんじゃないやい」と思ってみたとしても、たとえいくらか形が違っていたとしても、それはやっぱり、あの時フロンティアで夢見た未来の世界。
その事実を受け入れることが、次へ進むための第一歩になります。
とは言っても、都市が窮屈なのも事実。窮屈さに耐えかねて、時々、フロンティアへの憧れが呼び覚まされます。
その憧れ、どうやって満たしましょうか?
新たなフロンティアを探すのは…無茶です。
なぜならフロンティアは、探すものではなく「見つかるもの」だからです。
他の目的で旅をして、偶然見つかるのがフロンティア。そんなフロンティアを探しに旅に出たところで、世界の広さに打ちのめされてしまうでしょう。
都市生活と折り合いをつけつつ、時々山や海に出かけ、キャンプをします。
都市生活を一時忘れ、不便だけど自由な小さなフロンティアを体験します。
だから、キャンプ場に都市生活用の機器を持ち込むなんてのは、邪道と言えます。
キャンプをするのは、フロンティアへのただの懐古ではありません。
行くべき方向、未来を見定めるための原点回帰として、キャンプをします。
都市にいると、自分が生きていることを忘れてしまいますから。
都市はあらゆるものを呑み込み、消化していきます。
いろんなものが無秩序に存在するより、同じものばかりたくさん存在する方が、効率がいいからです。
効率化のために、都市は巨大化・均質化していきます。つまり、どこへ行っても同じようなチェーン店が立ち並ぶ、ってな光景です。
そうして生まれる巨大なシステムは、もはや個人の手には負えない代物になっていくでしょう。
誰も全貌を把握できない巨大システム…それは、不安定なものです。
そんなシステムの中で、個人は、目の前のごく一部分だけを担う歯車になっていきます。
それは…時に人間性を否定するものでもあります。
そんな巨大システムに一箇所、ほころびが生じたとします。
全体が均質化しているということは、弱いところも同じ。小さなほころびが、一気に全体に広がる可能性があります。
均質化している — つまり「みんな一緒」というのは、調子のいい時は大きな勢いを生みますが、同時に脆さも抱えています。
巨大なシステムが破綻した後に現れるのは、小さくまとまったシステムが無数に集まってできている「小粋な世界」。
一つ一つのシステムは小さくまとまっているため、個人でもその全体像を見渡すことができます。
システムの中の歯車ではなく、個人が自立することができます。
一つ一つのシステムは小さくまとまっていて、またそれぞれに個性があるため、たとえ一箇所にほころびが生じても、それはあまり広がったりはしません。
被害を最小限度に留めることができます。
以上、何だかよく分からない観念的な話でした。
でもいずれ、もっと具体的な未来が見えてくる日が来るでしょう。きっと。